病気って言うほどではないけれど、なんとなく体がだるくて調子でないなぁ、という体験ってどなたにもありますよね。
そんな状態のことを東洋医学では読んで字の通り「未病」と呼んでいます。
病気になってから、身体の悪い部分だけを見て治療するのではなく、「未病」のうちから体内のひずみを整えて健康増進を図りましょう。その考えに基づいて、その人の体質や体調に合った食材を組み合わせて作るのが、健康料理「薬膳」です!
薬膳はその人の体質や、その日の体調に合った食材を選んで料理を作る、あなたのための「オーダーメイドの料理」といえます。
これも薬膳食材の仲間。こたつにみかんは薬膳の理にかなっていた!
こたつに乗っている果物かごからみかんを取って、は昔からなじみのある冬の名物ですね。10月~4月が旬のみかんは、果実のなかでもビタミンCやカロテンの含有量が多いことが特徴で、1日に2~3個食べれば所要量を摂取できます。このみかんはほんわかと体を温める働きが期待されます。無農薬のみかんが手に入った時には、日干ししたみかんの皮をお湯に入れた「みかん茶」をいただくといいでしょう。ウンシュウミカンの皮を乾燥させた「陳皮(チンピ)」も有名ですね。
冬は1年のなかでも特に「陰」の力が強まっているとされる時期で、寒さで体の機能が冬眠状態になってエネルギー代謝も低下しがちです。そこで薬膳では、「補陽温腎」といって、体を温め造血作用のある食べ物でエネルギーを高めて、「陰」と「陽」のバランスを保つことが冬を健やかに過ごすポイントとしています。
一方、冬から春にかけて食べることの多いいちごは、反対に体を冷やす食べ物になります。熱を収めたい時に食べるといいでしょう。
薬膳の基本概念
陰陽(いんよう)
すべてのものは「陰」と「陽」に分類され、これらのバランスが健康に影響を与えます。例えば、体を冷やす食材(陰)と温める食材(陽)を適切に組み合わせることが重要です。
五行(ごぎょう)
自然界の要素を「木・火・土・金・水」の五つに分類し、それぞれが相互に影響し合うと考えます。これに基づき、食材も五行に対応し、特定の臓器や機能に作用します。
五味(ごみ)
食材の味を「酸・苦・甘・辛・鹹(しおからい)」の五つに分類し、それぞれが異なる臓器や機能に影響を与えます。例えば、酸味は肝に、苦味は心に作用するとされています。
五気(ごき)
食材の性質を「寒・涼・平・温・熱」の五つに分類し、体を冷やすものから温めるものまであります。体質や季節に応じて、これらを適切に選ぶことが大切です。
体質別の特徴とおすすめ食材
陰虚(いんきょ)
体の潤いが不足し、乾燥しやすい体質。おすすめ食材は、体を潤す作用のある白きくらげ、山芋、梨など。
気虚(ききょ)
エネルギーが不足し、疲れやすい体質。おすすめ食材は、エネルギーを補う米、いも類、鶏肉、豆類など。
気滞(きたい)
気の流れが滞り、ストレスを感じやすい体質。おすすめ食材は、気の巡りを良くする柑橘類、香味野菜、ハーブティーなど。
血虚(けっきょ)
血が不足し、貧血気味の体質。おすすめ食材は、血を補うほうれん草、レバー、黒ごまなど。
血瘀(けつお)
血の流れが悪く、冷えやすい体質。おすすめ食材は、血行を促進する生姜、にんにく、玉ねぎなど。
薬膳の取り入れ方
旬の食材を活用
季節に応じた旬の食材は、その時期に必要な栄養素を豊富に含んでおり、自然と体調を整える助けになります。
食材の性質を理解
食材が持つ性質(五気)や味(五味)を理解し、体調や季節に合わせて組み合わせることで、効果的な薬膳を実践できます。
バランスの取れた食事
特定の食材に偏らず、多様な食材を組み合わせることで、栄養バランスを保ち、全体的な健康維持につながります。
薬膳は、日常の食事に少しの工夫を加えることで、無理なく取り入れることができます。自分の体質や季節に合わせた食材選びを心がけ、健康的な生活を送りましょう。
こんな未病が気になったら…症状別に期待できる薬膳の効果・効能を一部ご紹介
あなたはどの症状(未病)にあてはまりますか?ここでは症状別に期待できる薬膳の効果・効能を一部ご紹介しています。
- 気虚(ききょ)
- 息切れがする
- だるい、疲れやすい
- 話し声が小さい
- 朝、起きづらい
- 食欲がない
- 気滞(きたい)
- のどに何かつかえた感じがする
- イライラしやすい
- ささいなことにヒステリックに反応してしまう
- みぞおちや胸、脇腹が張ったり、つかえたりする
- 怒りっぽい
- 血虚(けっきょ)
- 目がかすむ
- こむらがえりを起こしやすい
- 立ちくらみ
- 髪の毛が細くなったり抜けやすくなったりする
- 肌にツヤや潤いがない
- 血瘀(けつお)
- 唇や皮膚が青紫色になっている
- 舌に青紫~黒紫の斑点
- 頭痛
- 月経痛、周期の異常
- 静脈瘤
- 頑固な肩こりや神経痛
- 水毒(すいどく)
- 梅雨時や雨の日に体調を崩しやすい
- 顔や手足がむくみやすい
- 体が重くだるい
- 舌に白い苔がべったりとついている
- おなかを押すとポチャポチャと音がする
- 胃腸がムカムカしやすい空腹感がない
- 痰や唾の量が以前より多くなった
- 乗り物酔いしやすい
気虚(ききょ)の症状が出ている方
気が不足した状態の「気虚」
東洋医学では、「気」が不足した状態を「気虚」といいます。「気虚」の症状は、気の不足する箇所によって、心気虚・肺気虚・脾気虚・肝気虚・腎気虚と、様々なタイプに分けられています。
症状
- 心気虚:
- 動悸息切れ
- 肺気虚:
- 風邪を引きやすい
- 脾気虚:
- 倦怠感、食欲不振、下痢、貧血
- 肝気虚:
- 脱力感、耳鳴り
- 腎気虚:
- 腰がだるい、むくみ、頻尿
気虚におすすめの薬膳
冬虫夏草・山薬・生姜・菊花・銀耳・胡麻子など
薬膳食材について山薬(さんやく)
山芋の生薬名である山薬。肌によいビタミンB群・C、ミネラルをたっぷり含みます。またネバネバの成分ムチンには保湿作用の他滋養強壮、
血糖値を下げる働きもある。
気滞(きたい)の症状が出ている方
症状
体が重く感じたり、張る感じがあります。イライラしやすい、怒りっぽい、みぞおちや胸、のど、脇腹が張ったりつかえたりする。生理前のイライラ「月経前緊張症」も「気滞」と深い関係があります。
気滞におすすめの薬膳
百合、竜眼肉、陳皮、玖瑰花、蘇葉
薬膳食材について竜眼肉(りゅうがんにく)
スクロース、グルコース、ビタミンAなどを含みます。鎮静・強壮作用があり、貧血、健忘症、不眠症の改善に用いられます。
血虚(けっきょ)の症状が出ている方
血が不足する血虚
女性は月に1度月経による出血があるため、体が冷えやすく、どうしても「血虚」体質になりがりです。血虚にはさまざまな
タイプがあります
症状
- 肝血虚:
- 視力の減退、不眠、イライラ、めまい、月経不順など
- 心血虚:
- 顔面蒼白、頭がくらくらする、動悸、不眠、健忘症など
血虚におすすめの薬膳
金針菜、大棗、黒米、高麗人参、熟地黄、芍薬、当帰、何首鳥、阿膠、酸棗仁
薬膳食材について黒米(くろごめ)
豊富なアミノ酸、ビタミンB群やE、鉄やカルシウムなどのミネラルにより、血液の浄化作用や妊産婦の体力回復、ダイエットに効果的です。
黒い色素の成分であるアントシアニンにより老化防止、視力の改善にも効果的です。
血瘀(けつお)の症状が出ている方
血の巡りが悪くなる血瘀
血液の巡りが滞って、体の各所に栄養を与える機能が低下した状態をいいます。ストレスや栄養不足、血の不足「血虚」が進んでも起こりやすくなる。不規則な生活や無理なダイエットからも起こりえます。
症状
肩こり、神経痛、頭痛、月経痛、静脈瘤、舌に斑点
血瘀におすすめの薬膳
陳皮、紅花、生姜、桂皮、牡丹皮、桃仁、芍薬、当帰、川芎 、牛膝、茯苓、玖瑰花
薬膳食材について茯苓(ぶくりょう)
神経の安定、消化機能を順調にし、胃潰瘍改善に効果的です。強壮作用、利尿作用もあります。
水毒(すいどく)の症状が出ている方
水分代謝が悪い水毒
成人の体の60~70%が「水」なので、水分代謝のバランスが崩れると影響は大きいのです。特に日本は湿気の多い土地なので
、水分代謝が悪くなる環境と言えます。
症状
多汗、体が重い、むくみ、朝起きられない、乗り物酔いしやすい、むかつき、舌に白い苔、梅雨時や雨の日に体調を崩す。
血瘀におすすめの薬膳
茯苓、生姜、山査子、緑豆、薏苡仁湯、決明子
薬膳食材について薏苡仁湯(よくいにん(ハトムギ))
コイキセラノイド、ビタミンB群、タンパク質、カルシウム、カリウムなどを含み、便秘、利尿、むくみ、肌荒れ、身体の痛み緩和に効果的です。
薬膳マイスターが活躍しています!

薬膳マイスター Mizukaさん
料理研究家として、体質や目的に合わせたレシピ提案ができるようにステップアップしたいと考え、受講を決めたMizukaさん。
薬膳マイスター取得後は、薬膳の知識を活かし、2冊の料理本を出版。現在フードコーディネーターとして食に関わるジャンルで活躍されています。
がくぶんの情報誌「manabiya-まなびや-」にて取材させていただきました!
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